GIBIER HUNTERS ジビエハンターズ

インタビュー

Interview

日本ジビエ振興協会 代表理事 / オーベルジュ・エスポワール オーナーシェフ

藤木 徳彦

今回は、日本ジビエ振興協会の理事そして、オーベルジュ・エスポワールのオーナーシェフでもある藤木 徳彦(ふじき のりひこ)さんに話をお伺いします。

 

GIBIER HUNTERS
まず、日本ジビエ振興協会が、どんな経緯で発足したかお伺いできますか?
藤木さん
もともとは2012年5月に任意団体として活動を開始して、2014年7月に活動NPO法人化し、2017年3月に一般社団法人になりました。
協会のポリシーというか藤木さんのポリシーを聞かせてください。
ジビエが「臭くて、硬くて、不味い」と思われている方が少なくないので、
皆さんに「ジビエ=美味しい」と思ってもらうことです。特に料理人の視点からです。もちろん、無駄になっている害獣の有効活用という大きなテーマもあります。
次にジビエにかかわることになる原体験を教えてください。
私のレストランに野菜を卸してくれている農家さんから、鹿が畑を荒らして困っているという話をたびたび聞くようになったことですね。
下種な質問ですみません。一般社団法人になるといいことがあるのでしょうか?
逆に大変なことは?収支は?スタッフは?
一番の違いは、活動の広がりでしょうか。いろいろなところからお声掛けいただけるようになりました。
大変なことは特にないのですが、一般社団法人になったことで、社会的責任は感じています。非営利型なので、基本利益は出せません。事務局スタッフと、思いのある方々と共に運営を行っています。新しく長野の茅野に小さな事務所を構えることができました。
ジビエって、本当に美味しいと思いますか?国産牛や豚と比べてですが。
美味しいですよ。
私の持論なんですが、家畜の肉は、味の改良の歴史だと思うのです。
結果、味では家畜に軍配が上がると思うのですが。
わかりやすい例えだと、天然マグロと養殖マグロの違いかな?養殖のほうが、脂がのっているでしょう?それが美味しいかどうかということです。
うーん、これは一本取られました。舌が肥えていないとジビエの良さがわからないということですね(笑)
よくジビエが言われる「臭くて、硬くて、不味い」の原因は、処理の問題です。
うまく処理されたジビエは本当に美味しいです。ですから、ジビエ振興協会では、解体の技術についてもかなりアドバイスしています。

シカ肉のロティ 信州産野菜添え ジビエソース


マルカッサン(仔イノシシ)骨付きロースのロティ
パースニップを包み込んだパイアッソン添え

最近、ジビエ振興協会が力を入れていることはなんですか?
美味しく安全なジビエを普及するために、解体技術向上や調理技術に関する研修やセミナーを開催し、人材育成を行っています。また、全国のジビエに携わる方々にむけて、情報収集や交流の場となる日本ジビエサミットを毎年全国各地で開催しています。
ジビエ振興協会では川上に力を入れているようですが、川下の販売とかしないんですか?
販売はしていません。非営利だからというのもありますが、あくまでもプラットホームを目指しています。販売は民間に頑張っていただきたいです。一方で、飲食店に向けた調理方法の提案や取扱いの方法など、川下のサポートも行っています。
しかし、食肉処理施設をいろいろ見ておもうのですが、販売に苦労しているところが多いですよね。ビジネス的に収支があうとおもいますか?
そもそも、ジビエは、ビジネス的にはきついんですよ。
理事長自ら、儲からない宣言ですか(笑) まずくありませんか?
ジビエが儲かると思って、多くの会社が参入してきていますが、ほとんど撤退しています。
うーん、当社もその口なので、困りました(笑)
そもそも殺処分すればいいだけのことを、「もったいない」で、食肉処理施設を建設し、高い肉を消費者に食べさせることに無理があるのでしょうか?
例えば、すき焼きは牛を使いますよね。同じように鹿なら〇〇料理というような文化を作っていかないと他の肉との価格競争になってしまいます。
現在、国産牛と同じ価格です。これについては?
できれば、今後の流通拡大に伴う価格競争により、ブタとウシの中間くらいまで下がってくれるのが理想です。
ちなみに食肉処理施設の成功例は?
ありますが、ごく稀です。
これからの新規参入なら、国や地域の補助を受けて運営上の負担を軽減する方法や、周辺の食肉処理施設や地域との広域連携を視野に入れた運営体制がよいのではないでしょうか。
あとは、高級部位(ロース・もも)以外の肉をどこへ売るかです。ただ焼いただけではかたくなってしまうウデやスジも、調理法を工夫すれば家庭でもおいしく食べられます。
そういった使い方を消費者にアナウンスしてあげることも大切です。そのためには売る側がまず勉強しなければいけませんが。
あとはペットフードへの利用とか。それから、新設の場合、地域住民の理解を得られるかもポイントです。
解体技術の差はあるんですか?
すごくあります。
僕がお話しした処理施設はみなさん、自信をもっていらっしゃいますが。
そうですね。いいことなんですが、ほとんどが我流なんです。やはり家畜のと殺場と比べると技術レベルが違いますね
銃・くくり罠・箱罠の味の差はありますか?今後の主流は?
ありますね。それぞれの捕獲方法により異なるメリット・デメリットがあります。
銃による捕獲は対象の個体に気づかれていない状態で、狩猟者の腕がよければ個体へのストレスを最も少なくすることができます。特に座って休んでいるときのネックショットがいいようです。
また、くくり罠の朝早く捕れたものや、箱罠の中でおとなしくしているものもよいですね。
あえて順位をつけるのであれば、適切で衛生的な血抜きがしやすい、わなによる捕獲が、これからの食肉利用にはよいのではないかと思います。
昔からの猟師さんが、川で内臓を摘出する作業はまずいですか?
違法ではないのですが、安全管理のできない屋外で内臓摘出を行うのは衛生上よくありません。
保冷という意味で雪を詰めたり、川で冷やすのは一見有効に見えますが、調査すると、個体全体に菌を行きわたらせる結果になってしまいます。
しかし、今後ガイドラインの順守を厳しくすると、施設にもお金がかかり、個人のハンター排除につながりませんか?
狩猟=文化・伝統ならいいのですが、すでに国策レベルの話ですから、やはり一定のルールが必要だと思います。
たしかに。一般の食肉処理施設(と殺場)とジビエの食肉処理施設だと技術に雲泥の差があるのですか?
解体技術の差はあります。加えて、家畜のと殺場には獣医もいますし、検査も厳しい。ジビエの食肉処理施設でも、高い技術を持った方はいます。また、ガイドラインを順守しているところは、衛生管理に関してもかなり高いレベルの施設もあります。
今ジビエに追い風が吹いていますが、もし逆風が吹くとすると?
食品事故です。
牛のレバーやユッケなどと同じです。需要の拡大を妨げる事故を防ぐために、しっかりとした衛生管理に関する知識や意識の定着が重要です。
ジビエ振興協会のイベントの予定は?
一番はジビエサミットです。今年は鹿児島県です。
かなりの来場がありそうですが。
おかげさまで、昨年度の和歌山でのサミットでは毎日400~500人、3日間のべ1500人が来てくれました。
どんな方が来るのですか?
自治体の方が多いですね。いろいろな課題を解決するために、サミットに参加する方が多いようです。
さらにジビエが拡販されるためには、特に何が必要ですか?
①捕獲のサポート
②販売先のサポート
この二つにつきます。
藤木さんのオーベルジュ・エスポワールでは、長野県産を仕入れをしているのですか?
いいえ、全国5か所くらいから仕入れています。
意外ですね。県によって、味が違いますか?
地域の環境の差や季節によって違います。
特に獣たちが食べているものによる差は顕著です。農家さんには申し訳ないのですが、鹿児島ならサツマイモを食べる時期や四国なら柑橘類を食べる時期には、肉も美味しくなります。
ちなみにフランス人は本当にジビエ食べているのですか?
はい、家庭でも外食でもよく食べます。しかし、フランス大使館の方に聞いた話では、ほとんどが養殖の輸入肉だということでした。僕も初めて知ったときは、びっくりしました。
ははは、北海道の羊のジンギスカンが、実はすべてニュージーランド産っていうのと同じですね。ちなみにどちらの輸入ですか?
鹿は、ニュージーランド、猪はカナダ産でした。
だから、日本のジビエは、「国産」「天然」だと声を大にして言いたいわけです。
たしかに、希少ですね。捨てているのがもったいない!
ところで、食肉処理施設が、「イタリアンやフレンチは、部位のいいとこしか取らない」と嘆くのを耳にするのですが、いい解決方法はないですか?
腕や、アバラ肉などですね。
ちょっと厳しい意見ですが、それは食肉処理施設がもっと調理法などを勉強して、提案型のビジネスをしたほうがいいと思います。
また、飲食店側も未利用部位に関心を持って、調理技術の研究をしていくことも大切です。
ごもっともですね。ジビエには環境庁・厚生省・農水省が絡んでいますが、縦割りの弊害は?
最近では、ジビエの議員連盟が発足したり、地方創生の一環として、官邸主導で対応策を出したりと、連携も活発に行っているようです。
そうすると各省庁の連携がスムーズになりますね。
期待しています。
本日はお忙しい中、インタビューありがとうございます。不躾な質問にも、丁寧にお答えいただき感謝しています。これからも大変だと思いますが、頑張ってください!

エスポワール 外観

エスポワール スタッフ

日本ジビエ振興協会理事

藤木 徳彦(ふじき のりひこ)

東京都生まれ。
駒場学園高校食物科卒業後、すぐに蓼科高原のオーベルジュで修行。
肉、魚、野菜の卸業を経験した後、98年「オーベルジュ・エスポワール」をオープン。オーナーシェフとして腕を振るう。
貪欲に地元食材を追求しており、地元食材を使った料理教室や食育講座、大学・高等学校の講師も務める。
地域の食材と環境を活かして、そこでしか味わえない美味しい料理や、そこでしか楽しむことのできない空間でのおもてなしを提唱し、「地産池消の仕事人」として全国各地で地域の魅力を発信するための助言を行っている。また、「(一社)日本ジビエ振興協会」代表理事として、全国各地の自治体と連携してジビエ講習会を開催している。

著書に「フレンチで味わう信州12か月」(信濃毎日出版社)「旨いぞ!シカ肉~捕獲、解体、販売、料理まで~」(農文協)「ぼくが伝えたい 山の幸 里の恵み」(旭屋出版)がある。
松本大学人間健康学部健康栄養学科、松本第一高等学校食物課特別講師。

2008年農水省「地産地消の仕事人」選定。
2009年4月~日本農業新聞「藤木シェフの食材発見」連載中。
2011年1月農水省「FACO食農連携コーディネーター」登録。
2011年9月農水省「六次産業化ボランタリープランナー」任命。
2012年5月「日本ジビエ振興協議会」代表に就任。
2014年7月「特定非営利活動法人日本ジビエ振興協議会」代表理事に就任。
2017年3月「(一社)日本ジビエ振興協会」代表理事に就任。