GIBIER HUNTERS ジビエハンターズ

インタビュー

Interview

辻調理師専門学校 西洋料理教授

中田 淑一

辻調理師専門学校(大阪市)・西洋料理 教授 中田淑一(なかた としかず)さんにジビエ料理について伺いました。

 

GIBIER HUNTERS
辻調理師専門学校(以下辻調)での、中田さんのお仕事は?
中田さん
西洋料理を担当しています。
料理の基礎テクニックや知識を、実習や講習を通して学生に教えています。
名刺に「教授」とありますね。かっこいいですね(笑) 中田さんの経歴を教えてください。
高校を卒業後、辻調に入学しました。その後、フランス・リヨンにある辻調グループフランス校に進学し、卒業後に辻調に入職しました。
ずいぶん昔の話ですね(笑)
入職後、すぐに教える立場になったのですか?
いえいえ、助手という立場からスタートし、学生の実習の材料集めや教授陣の講習の準備など、その他は料理番組の仕事もさせていただきました。
学校のカリキュラムを教えてもらえますか?
学科は1年制から3年制まであり、1年間の授業時間はだいたい1000時間くらい。
内容としては大きく「調理」「栄養」「衛生」の3分野を教えることになっています。
複数年学科では、2年次に西洋料理・日本料理・中国料理の専攻ができたり、インターンシップなどが加わり、より実践的なカリキュラム構成になっています。
結構、授業料高そう・・・
1年で214万円です。2年で370万くらいです。(あっさり)
やっぱり高い!
学生に接している教職員の数、材料費のことを考えると決して高くはないと思います。
最近の学生さんはどんな感じなんですか?
インターネットや本、テレビなど様々なメディアで、料理の情報を見る機会が多く、私の学生時代より色んなことをよく知っています。しかし、料理の基本は昔も今も変わらないと思います。
学生たちに新しい情報を加えていくことも必要ですが、まずはしっかりと基本を身につけることが大事だと思います。
玉ねぎの皮むきとか(笑) 学校では、便利な道具があっても、包丁を使わないといけないんですか?
もちろん包丁の手入れの仕方、包丁を使った野菜の皮むきなど基本から教えます。
ただ、時代の流れとともに道具が変化していることも知る必要がありますから講習では便利な道具もどんどん使います。
へぇ~、ちなみに、やっぱり皆さん、卒業後は、開店志望なんですか?
もちろんオーナーシェフを目指す学生もいますが、育ってきた環境や考え方が違いますので、全ての学生がそのように希望しているわけではありません。
将来のことに関しては皆すごく真面目だと思います。
授業でもジビエの授業があるのですか?
はい、去年から「調理技術理論」という科目でジビエを2回(猟鳥類、野禽類)に分けて授業しています。
学生は鹿のやわらかさ、猪の脂身のうまさに感動していました。
彼らはジビエに対して、授業前は「臭い・硬い」のイメージがあったようです。
中田さんがジビエと出会うきっかけは?
日本ジビエ振興協会の藤木さんが、辻調の会場を借りて、ジビエの講演をしたときに、お手伝いしたのが始まりです。
どんなところに共感されたのですか?
私の家は、大阪の北にあり、職場から遠いですが山と川に囲まれた自然豊かな場所です。
最近、近くの山に人の手が入り、行き場を失った鹿や猪が里におりてくるようになり、鳥獣被害がひどくなりました。農家さんも被害に遭われていて・・料理人として役に立てないかなと思っていました。
そのようなことを考えているときに藤木さんに出会い、意気投合しました。
さて、中田さんの鹿おすすめレシピを教えてください。
レシピというものではなく、すごく単純で、「鹿を柔らかく焼く方法」です。
塩、こしょうした鹿を焼いただけですね。これは極秘料理ですね(笑)
中温で温めたバターで、短時間で肉の表面を温めます。肉を網の上にのせてオーブンで火を入れます。
これは私の考えですが、鹿肉はすごく繊細な肉質なので肉の表面に厚い壁をつくらないほうがいいと思います。できればコンベクションオーブン(スチーム&オーブン)がおすすめです。鹿肉は、火を入れすぎると硬くなりパサつきを感じます。
例えば、ロース肉に火を通す場合、110℃のオーブンで3分火入れ→3分休ませる方法を数回繰り返します。鹿肉の状態で火入れを何セット繰り返すかコントロールします。休ませながら火を入れることがポイントです。
また、バターを加えたフライパンで表面を焼き、肉の表面に油をかけながら焼き上げる方法もあります。

鹿の火入れ加減
「休ませる」ってなんですか?
加熱すると、旨味(水分)が、肉の中で駆け巡るのですが、これをそのままカットすると肉汁が外にでてしまいますよね。
えっ?
テレビでは、肉汁外に出たとき美味しそうに見えますけど・・ダメですか?
出来るだけ外に出ないようにしたいです。そのために肉を休ませます。あわててはいけないのです。
そして、最後にバターですが、表面をほんの少し香ばしさをつけます。薄いお化粧です。薄化粧!バターの風味を少し肉に吸わせるだけ。
さすが教授、表現が詩的ですね(笑)。
さて、ジビエの本場フランスのジビエ事情を伺いたいですが、日本では肉に毛がついているだけで、クレームになりますが、あちらも衛生面には、厳しいのですか?
ついているかもしれない(笑)
フランスだめじゃないですか!
いえいえ、フランスはジビエ文化が長いですから。
実際私が、フランスでウサギ料理を食べていた時に、散弾が出てきた経験が一度だけあります。その時「ついてるね!」といわれました。
日本だったら、想像しただけで怖い話ですね。
やはりジビエに対しての理解度が違います。
ただ、20年程前と今では、かなり違ってきました。
昔は店先に、鹿、猪、ウサギ、鳥類をよく見かけました。カモも吊るされてたし。懐かしい光景です。
最近は、あまり見なくなりましたね。若者が食べないみたいです。
自然保護運動の影響ですか?
たぶん、他に美味しいものがあるのかもしれません(笑)。
もし中田さんが、肉を仕入れるときに、ガイドラインを満たしている処理施設のそこそこの肉と、ガイドラインは守ってないけど旨い猟師の肉なら、どちらを選びますか?
どちらも選ばないと思います。
ガイドラインを守る信頼できる人から仕入れをします。
ですよね。
大手スーパーや高級スーパーにジビエは並ぶとおもいますか?
今は何とも言えません。
先入観を払しょくするのに、かなり時間がかかるでしょう。
「今日の夕飯何にする?」「鹿のロースソテー」・・・まだそこまでいっていないような気がします。
まずは飲食店の扱いを広げないと。個人消費の場合は、加工品から試してもらったほうがいいのかもしれません。
おっしゃる通りですね。牛・豚・鳥がいますからね・・・今後ジビエを伸ばすのに必要なことはなんでしょう?
「価格」・「安心」・「安定」ですね。
「価格」は牛と豚の中間くらいが理想です。
「安心」はやはり自分の子供にも食べてもらいたいと思うくらいの安心感が必要です。
「安定」は供給です。レストランは安定供給しない食材は使えませんから。
辻調さんは、日本ジビエ振興協会の会員ですか?
はい、会員です。
先日行われたジビエ議連の試食会(約100名くらい)で、料理を辻調さんスタッフが担当されていました。何名いらしたんですか?
わたくし含め6名です。
これほど多くの方にジビエ料理を提供するという、普段できないことが経験できたと思います。
今後ジビエとどのように向かい合っていきますか?
いろいろな方に、知識や技術を伝播させたいです。
辻調の卒業生だけでも14万人います。日本全国の鳥獣被害でお困りになっている市町村の役に立てるようになりたいです。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
これからも辻調を通じて、 ジビエ料理の伝道師として頑張ってください。

鹿肉のグラン・ヴヌール風

講義風景

辻調理師専門学校 西洋料理教授

中田 淑一(なかた としかず)

1989年辻調理師専門学校を卒業後、辻調グループフランス校に入学。
1990年辻調理師専門学校に入職。
「第1回 エスコフィエ・フランス料理コンクール」で第3位に入賞。
九州・沖縄サミット「首脳晩餐会」では料理製作スタッフとして参加。
寝台特急「トワイライトエクスプレス」の“さよなら特別メニュー”プロデュースを担当。